特集

犬と暮らす、快適ライフスタイル。
ヨコハマ最新「犬カフェ」事情

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■一般化が進む都会の犬カフェ

ここ数年のペットブームの中で、「犬」を飼う人は確実に増加して来ている。以前は大家族の一員として存在していた「犬」も、最近では男女問わず、未婚の若者がマンションやアパートで犬を飼うようなケースも当たり前になってきている。ヨコハマのベイエリアにも、ここ数年マンションが急増中だ。そんな中、増えてきたのが「犬カフェ」である。犬カフェとは一般的に「犬を連れて入る事が可能なカフェ」のことを言い、店舗によっては「ドッグメニュー」を用意していることもある。都心では「家族同様」のペットと一緒に過ごせる場は少なく、行動範囲がせばめられるなど、制約が多い。しかし「犬カフェ」に行けば、気がねなく犬連れで食事ができ、気軽に時間を過ごせるとして人気を呼んでいる。犬連れがOKである、という意外は普通の「飲食店」と何ら変わらないのだが、「犬づれでなくては入れない」「犬の飼い主同志・サークルのイベントスペース」的なイメージが一般的には持たれる事が多いようだ。また「犬」をメインにした店としてサービスが悪いのではないか、食事もまともに出来ないのではないか、といったイメージもあった。しかし最近では、そんな既存のイメージから、少しずつ変化を見せているようだ。

ヨコハマのマンション事情
「cafe Question」のDOG OKの看板

■犬と人の「共存」がキーワード

みなとみらい地区、ランドマークプラザ地下1階にある「DOG GARDEN CAFE」はカリフォルニア州サンタモニカの犬をモチーフにしたブランド 「DOG DEPT」がプロデュースする、新しいスタイルのドッグカフェ。犬たちが、ゆっくりくつろげるようにスモール・ドッグが自由に遊べるスペース「ドギー・ランド」や、犬用ランチ「ドギー・メニュー」も用意している。肥満に悩む都会の犬の為、ヘルス&ビューティをキーワードにしたローカロリー犬用メニューを提案しているのだとか。「みなとみらいに犬連れで来られる店舗がない」と、ランドマーク側の誘致を受け、2004年2月にオープン。「人をメインに考え、犬連れのお客様にもそうでない方にも同様のサービスを心がけている」のが特徴だという。場所柄、犬連れでなくランチを利用しに訪れるビジネスマンやOLも多い為、手早く済ませられるようにワンプレートを用意するなどの配慮もある。

「ウエストコーストのドッグオーナーたちのライフスタイルを思わせるお店」がこのカフェのコンセプトだが「犬を連れてカフェを利用するということを、一つの出来事にするのではなく、さりげない日常生活の一部としてごく自然に、自由に使って欲し い。」と店長の岡田彩子氏は語る。休日には「自分で犬は飼えないが、子供達に犬と触れ合える機会を持たせたい」とやってくる家族連れも多いという。

DOG GARDEN CAFE DOG DEPT

「Cafe FLOWER」は山下公園から徒歩5分圏内の関内ビジネスエリアに近い、ホットサンドイッチ&カフェ&ダイニング。県民ホールや結婚式場も近く、パーティー等、二次会にもよく利用される。また、ランチタイムには多くのビジネスマン・OL達が訪れる。他店と違い、「犬カフェ」と歌ってはいないのが特徴で、どこにも表記はない。何もしらず訪れた人は、従来の犬カフェとのイメージの違いに驚かされるかもしれない。白で統一された明るい空間は、清潔感が重視され、メニューも手軽なものからボリュームあるものまで多数用意されている。

カフェというと女性のイメージが強いが、親しみやすいホットサンドをメインに置き、男性にも入りやすい雰囲気を考えているとのこと。自身も犬を飼っているという、店長の荒井淳氏は「犬カフェにありがちな疎外感を作る事だけは避けたい。犬づれだから、とか犬がいないから、とかではなく、人と犬とが当たり前に共存するフリーダムな場所を作りたい。そのために店側は、利用するお客様全員が気持ち良くすごせる空間づくりを大切にしている」と語る。

Cafe FLOWER

「犬カフェ」を特別な位置に置くのではなく、あくまでも「普通のカフェに、犬を連れて入ることが可能」とし、特別に意識せず一般客にも自由に利用してもらう。新しいスタイルを持つ、これら2つの店舗に共通するキーワードは「犬と人との共存」と言えるだろう。

ランドマークプラザにある「DOG GARDEN CAFE」 明るい店舗空間と開放感のあるオープンテラス 一番人気の「ドギー・メニュー」、ミートパテ Sサイズ 400円 「DOG GARDEN CAFE」店長の岡田彩子氏 山下公園そばのオフィス棟「SOHO STATION」1階にある「Cafe FLOWER」 広いガラスの壁面から明るい日差しが差し込む、白を基調とした店内 元町出身の「Cafe FLOWER」オーナー、荒井淳氏

■犬にも人にも優しい元町商店街

一方、みなとみらい線の開通により、観光客が増加したとのデータもある元町商店街では新しい取り組みが始まっている。年に一度、犬と犬の飼い主をメインとした「モトマチ ドッグフェスタ」を開催したり、キタムラ本店による犬が水を飲むためのPET BARの設置、商店街内のほとんどを犬連れOKでショッピングが楽しめるようにしたりと、「犬に優しい商店街」の取り組みを行っている。そんな元町付近の「犬カフェ」事情は、どうなっているのだろうか。

元町商店街

「マカオンカフェ」は、横浜在住・犬好きのオーナーが「地元ヨコハマに犬連れの店が少ない」と2001年にオープン。元町商店街の終点から、徒歩2分程度の場所にあり、山下公園も近い。飼い主同志のクチコミで広がり、現在ではインターネットで集まった仲間達のオフ会、犬連れでのウェディングパーティーなども開いている。室内に連れて入れる犬というと小型犬のイメージがあるが、ここに訪れるのは大型犬が多い。それも、犬が店内でくつろげるだけのスペースが充分に用意されているからといえるだろう。

横浜の犬カフェとして、現在ではかなりの知名度のあるこの店舗、犬がメインなのかと思いきや、メインはあくまでも「人」として考えているとのこと。店長の井坂友重氏は「犬連れOKなテラス席を設けた店舗はチェーン店でも増えてはいるが、通年テラス席のみでは飼い主もゆっくり楽しむ事が出来ない。散歩途中での休憩や、しっかり食事をしたいと思った時に、犬連れのままでもごく普通に入れる場所が必要。近場の人も、遠方から来る人も、気負わずラフに楽しめる場所を提案して行きたい」と語る。ネットや雑誌などで情報を仕入れて訪れる客が殆どで、犬の足跡をかたどった「ドッグラテ」は一般客にも人気を呼んでいる。

マカオンカフェ

「cafe Question」は元町に古くからある老舗のバーを改造して作った店。店長は、オーナー吉田喜美子氏の飼い犬「アンサー君」。常連曰く「ついつい長居してしまう」というアットホームな店内で「ドッグケーキ」「ドッグ・クッキー」「お子様ランチ(ドッグ・メニュー)」を常時用意している。遠方からのリピーターも多く、客は「気づけばラストまでいることもしばしば」だとか。「家族」と同じ目線でごはんが食べたいというニーズを汲み、犬専用の「ドック・チェアー」用意。人間と同じ高さに犬を座らせ、一緒に食事を楽しむことが出来る。また、季節ごとにハロウィンやクリスマスイベント、2月には節分イベントが開催されるなど客と店とが一緒になって楽しめるスタイルを提案。元よりバーとして運営されていただけあって、カクテルも充実している。メニューはハンバーグやグラタンなどボリュームがあり、カフェというよりはレストラン的な雰囲気だ。

オーナーの吉田氏は「家族の一員である犬は、飼い主にとっては子供のようなもの。飼い主の視点で考えた安心感を常に考えている。BARより、ドッグカフェとして経営するほうが大変だが、それでも続けるのはやはり自分が犬が好きだから。自分達にとっては家族と過ごせる場所が少ないのは淋しく、行動範囲の狭さも感じている。もっと、飼い主側のマナーが向上していき、犬づれでも迷惑がかからないのが普通と認知されれば、ドッグ・カフェだけでなく、もっと普通に犬をつれていける場所が増えて行くのではないか」と語る。

BAR Question
元町商店街の終点から徒歩数分・前面ガラス張りの「マカオンカフェ」が目を引く 大型犬づれでも安心してくつろげるマカオンカフェ店内 ランチタイムから夜まで、客が自由に使える空間を提案 気楽に利用して欲しいと語る店長の井坂友重氏 BARならではのシックな雰囲気を持つ「クエスチョン」外観 クエスチョン店長の『アンサー君』(1番左)と常連犬達。ドックチェアーで来客を待つ バーカウンター前で常連客・常連犬達がくつろぐ オリジナルの「ドッグ・クッキー」を常時店内に置いている

■都会と自然が共存するヨコハマの魅力

飼い主達は「集まれる場所」を欲しがっているわけではなく、家族と一緒に日常をすごす為の「当たり前の場」を欲しがっている。しかしどの店舗のオーナーも口をそろえていうのは「まずは、飼い主のマナーありき」であるということだ。犬を「社会」に出す前に、一般的なしつけはキチンとしておく。犬が迷惑をかける存在ではないと言う事、それを飼い主一人一人が認知させて行く事が「犬カフェ」のみならず多くの飲食店・施設にも犬連れ利用を可能とさせるきっかけになるのではないだろうか。

東京にも多数犬カフェはある。しかし、最近では、車でわざわざ「ヨコハマ」の犬カフェに足を運ぶ客が増えているという。犬の飼い主にとって「ヨコハマ」とはどのような魅力を持った場所なのか。「クエスチョン」を訪れていた常連は、「横浜は遊ぶところが多い。たとえばこの付近だけでも、海があり、山下公園があり、中華街があり、山手地区がある。都会的な雰囲気と自然が共存し、見所もたくさんある。犬を遊ばせたり、散歩させるのにも最適だ。東京では、ショッピングとカフェ利用しか出来ないが、ヨコハマは違う。スポットが多く、ブランド店でも気軽に入れる雰囲気は、ヨコハマ特有のものだ」と語った。

元町商店街での取り組みや、PRの効果もあるが、ヨコハマにはもともと、犬と共存しやすい環境・土地的な性質が備わっているのではないか。元町や関内、山手エリアにはペットOKなマンションの建設が目立ち、セカンドハウスとして都心からポートサイド地区などに移住する人達も増加している。都会に暮らす人々の中で「犬と共に過ごすライフスタイル」が定着しはじめ、犬連れであっても自由に行動できる環境・スポットのニーズが高まりつつあると言えるだろう。犬が快適に過ごせ、飼い主にとっては自由で開放的な街。ヨコハマ特有の土地柄を生かし「犬にも人にも優しい街」を造って行くことが、これからのヨコハマの活性化に繋がっていくのかもしれない。

弓月ひろみ + ヨコハマ経済新聞編集部

「cafe Question」で犬を抱くお客さん 「DOG GARDEN CAFE」でランチを楽しむお客さん 犬の散歩コースに最適の山下公園
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