特集

ヨコハマ発、「世界規格」のチームへ。
横浜F・マリノスの果てしなき挑戦

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■なぜ「世界規格」でないとだめなのか。

ヨコハマ経済新聞(以下YK) F・マリノスのホームページに、「社長からの手紙」というコーナーがありますね。内部事情的なお話を気さくな感じで書いてらっしゃって、すごく面白いですね。

左伴 あれは、ある選手の契約更改の時にちょっとした話の行き違いがあって、それが新聞に掲載され、読者に誤解を与えたことがあったんです。それで、ファンの方々に事実を説明するために書いたのが始まりなんですよ。その後も、中村俊輔の海外移籍について意見を述べたりしているうち、いつのまにか定例化してしまいましてね。本当はやめたいんだけど、サポーターが許してくれない(笑)。最近じゃ、チラシの文まで書かされてるんですよ。社長というより、ほとんど営業担当です(笑)。

YK しかし社長がはっきりモノを言い、先陣を切っていろんなことをやるというのはいいですね。

左伴 親会社の日産自動車から、この会社を立て直せと言われてやってきたのは2001年、45歳の時でした。当時、チームは残留争いをしていたんです。僕はサッカーのことは良く知らなかったんですが、試合を見ると、僕の目には選手がすごく弱々しく映った。横パスばかりで勝負をしない。点を先に入れられると、試合を投げてしまう。一方で、会社の財務表を見ると、日産自動車からの補填がなければ3回は倒産しているという状態でした。スタッフも言い訳が多いというか、私に対しても、どうせ日産から来た期間限定の社長でしょ、素人にこの業界は無理ですよ、みたいな雰囲気があった。こんな調子ではいつまでも赤字は解消しないし、チームもすぐには強くならないな、と思ったものです。

YK それがいまや2年連続の年間チャンピオン。社長も昨年あたりから「世界規格」のチームを目指すという、大きなスローガンを掲げていますね。

左伴 これは何も、世界的に有名なクラブになりたいというロマンティシズムで言ってるんじゃないんですよ。経営的に言えば、世界規格を目指すというより、世界規格にしていかないとだめなんです。すでに黒字で、自立した企業なら、わざわざ世界規格にならなくてもいい。日本で一番を取っていればいいわけです。しかし、実際はそうではない。私が財務表を見て最初に思ったのは、日本の中だけで事業をやっていたのでは限界がある、ということでした。たとえば今年、ホームで行うJリーグの試合は17あります。ナビスコカップを入れても20試合程度。この20試合でどれだけ稼げるか、ということです。ヨーロッパならサッカーは非常に付加価値の高い商材ですから、スポンサーフィーにしても、放映料にしても、非常に高い。しかし日本はまだそのレベルまでいっていないんです。 そのうえ日本では、グッズのロイヤリティとか放映料の分配とか、いろんな制約がありましてね。F・マリノスは横浜という大都市にあるので、グッズ販売やサッカースクールの収益をもっと伸ばせる余地はあります。しかしそれでも、入場料やスポンサー料、その他の収入だけで球団を維持して行くのは非常に難しい。ACミランやレアル・マドリッドのように経営的に自立し、強くて大きなクラブにするには、今のスキームでは限界があるんです。であれば、違うスキーム、違うマーケットからお金をいただく方法を模索しないといけない。たとえば、ユヴェントスと親善試合をやって入場料をいただく。その時にユヴェントスとF・マリノスのコラボレーションTシャツを作って販売する。ヨーロッパの日産法人を通じてビジネスの展開を図ってもいい。こんなふうに、日本よりサッカーの認知度、付加価値の高いところへ乗り出して行って、ワールドクラスの事業運営をしていく。そうしなければ、岡田監督の言う「常勝チーム」を支えていく上で必要な財力を形成できないし、お客様へのホスピタリティを高い次元で提供し続けられない。これが「世界規格」にならないとだめ、という理由なんです。

横浜F・マリノス 日産自動車 Jリーグ 公式サイト 2005 Jリーグ ヤマザキナビスコカップ
横浜マリノス株式会社代表取締役・左伴繁雄さん 横浜F・マリノス 日産スタジアムでの試合の様子 日産スタジアムでの試合の様子

■岡田監督と僕は、言わば車の両輪です。

左伴 世界規格のチームになるために、まず何をすればいいか。言うまでもなく、世界で戦えるチームを作らなくてはいけません。とはいえ、当時は優勝どころか、残留争いをしているような状況でした。そこで選手の補強に乗り出したんです。それまでうちのチームは純粋培養の選手が多くて、仲良しグループ的なところがありました。真面目にランニングしていると、「なに真面目にやってるんだよ」と冷やかされるような雰囲気があった。そこでチームを活性化させるために、外部から血を入れることにしたんです。これは、カルロス・ゴーンのやり方に倣ったんですけどね(笑)。さっそく、中沢、奥、清水といったスーパーな選手を獲ってきて、あいつらがあそこまでがんばっているのに、俺たちは何をやっていたんだろう、という意識をみんなに持たせた。そして、その総仕上げが岡田さんだったわけです。

YK 岡田さんを選んだのは大正解でしたね。

左伴 大正解。期待以上でした。残留争いをしていた時も、選手一人ひとりを見るとすごくまじめで、うまかったんです。ですから、メンタルを変えられる人が必要だと思った。それと、絶対に日本人でなくては嫌だった。組織で仕事をする時に一番大事なのはコミュニケーションですからね。そして岡田監督のもと、最後まであきらめない、90分間芸術として観客を魅了し、感動するサッカーを目指したんです。岡田監督と僕は、言わば車の両輪です。監督はチームを天下一品にし、僕は会社を天下一品にする。岡田監督には、今日、明日を勝つマネージメントはもちろんですが、1年後、2年後に、第2、第3の中村俊輔、山瀬功治が生まれるようなプログラミングをしてもらうこともお願いしているんです。長期的な視野でね。だから岡田監督が来てからは、僕自身はチームに口出ししなくなりました。

YK チームのことは岡田監督に一任と。

左伴 そうです。口を出されたら迷惑だとも言われてるし。うれしいけど、ちょっと寂しいかな(笑)。

YK Jリーグでチャンピオンになると、AFCチャンピオンズリーグの出場など、試合数が増えますね。

左伴 年間40試合くらいだったのが、60試合くらいになります。日本代表にも何人か取られるから、選手層をもっと厚くしなければいけない。そこでスーパーな選手だけでなく、準レギュラークラスの選手も獲得し、2チームできるくらい層を厚くしました。ケガ人が増えることも想定して、メディカルスタッフも増強しました。ここまでがフェーズ1。次に考えたのが、育成普及チームからトップチームまで一緒にトレーニングできる環境を整備することです。うちの練習場は、トップが戸塚、育成部門が新子安にあって、スタッフ的にも設備的にも効率が悪かった。一か所にまとめればそれらの問題が解消し、育成クラスの選手も常にいい手本を見ながら練習できる。そこからトップで活躍する選手が育てば、外から補強するより経済的です。そこで、みなとみらいへの移転ということになったわけです。

※AFCチャンピオンズリーグ2005とは、アジア各国のクラブチャンピオンにより、予選リーグと決勝トーナメント(ホーム&アウェー)を行い、アジア王者を決定する大会。横浜F・マリノスは山東魯能秦山(中国)、PSMマカッサル(インドネシア)、BEC・テロ・サーサナ(タイ)と予選リーグ・グループFに入り、4月7日現在2勝1敗、勝ち点6の2位。優勝すれば、12月に日本で開催される世界クラブ選手権(FIFA クラブワールドチャンピオンシップ トヨタカップジャパン 2005)に出場できる。

AFCチャンピオンズリーグ 公式サイト(英語)
選手とともにフィールドに入場した子供たち 選手の入場を迎えるの様子 得点を決めて喜ぶ選手たち 得点を決めて喜ぶ選手たち

■横浜は、「勝負ができる街」。

YK みなとみらい21地区への移転話は、いつ頃から出てきたものなんですか。

左伴 昨年の頭くらいです。みなとみらいに移転する理由は、一つには利便性です。練習にしても移動にしても、非常に便利ですよね。育成からトップまで一貫したトレーニングができるので、強化にもつながる。もう一つは、市民やサポーターに憩いの場を提供できるということ。戸塚の練習場では見学するだけでしたが、新しい施設にはカフェもショップも、ジムもある。大きなスクリーンで試合を見たり、真っ青な芝を見ながらぼーっとしていてもいい。

YK 見学者が格段に増えますね。

左伴 岡田監督は「秘密練習ができなくなるな」と言っていますよ(笑)。

YK 横浜の真ん中に進出することで、横浜色がいちだんと鮮明になりますね。しかし一方で、昨年F・マリノスは横須賀のホームタウン化も決めました。

左伴 一番大きな理由は、昔から追浜にうちのサッカースクールがあったということです。こういう施設がありながら、これまで何もしてこなかったのが逆に不自然だった。もう一つは、横須賀という街の規模です。人口約43万人というのは、街としてまとまるにはちょうどいい。それにここは昔からの住人が多く、勝ち負けに熱い市民性なんだそうです。横浜は350万人もいて、ベイスターズもあるし、娯楽施設もいっぱいある。週末遊びに出かける時も、選択肢がたくさんあるわけです。ところが横須賀は、横浜とは事情が異なる。「おらが街のチーム」として、興国の一戦ここにありという時にはバスを連ねて応援に来てくれるんじゃないだろうか。横浜とはまた違ったかたちでお付き合いをしていけば、マーケットが広がるという確信を持ったんですよ。

YK 横浜をホームタウンとすることの難しさというのは、どのあたりに感じていますか?

左伴 私たちは選ばれる身、ということですね。これはすごく厳しいですよ。鹿島などは小中学校の運動会の日を決めるのに、アントラーズの日程が確定してから決定すると言っていました。清水にしても、駅前商店街は1店残らず黄色い旗を掲げている。うらやましいですよね。町ぐるみで応援するというのがお約束になっている。しかし横浜はそういう街ではない。チームが強くて、好カードでも、天候に恵まれて、他では目ぼしいイベントがない、ということでないと来てくれない。しかし逆にそういう街だからこそ、数ある選択肢の中からうちを選んでもらった時には、努力したことに対する達成感や喜びを味わえる。そういう醍醐味はありますよね。「勝負ができる街」なんです。そういう意味では、すごく恵まれた地域だとも言えますね。

※みなとみらい21地区に横浜F・マリノスの本社とトレーニングセンターが2006年12月(天然芝グラウンド及び店舗棟は同3月)にオープンする予定。約45,600?の敷地に、クラブハウスと事務所、グラウンド(天然芝2面、人工芝2面)、スタンド棟(1,200席)、店舗棟(レストラン等)、駐車場(145台収容)などが整備される。Jリーグ随一の施設となることは間違いない。

横浜マリノス「MM21地区61街区」に本社移転発表
横浜マリノス本社とトレーニングセンター完成予想図 グラウンドは4面確保できる 駐車場は約145台収容する予定 レストラン・シアター・グッズショップなどの店舗も フロントオフィスを含む全機能が移転する 岡田監督と沢田秀男横須賀市長

■数十人も6万5000人も、同じです。

YK 社長は、社会貢献、地域還元の重要性を強くおっしゃっていますね。

左伴 僕は、企業の社会的責任は3つあると思っているんです。一つは地元の雇用の創出。これは日本の企業も昔からやってきました。2つめはアカウンタビリティ、すなわち説明責任、企業の透明性、公平性という部分です。これらは株の購買意欲や株価に影響する。最近は外資がいっぱい入ってきているので、一生懸命やる企業が増えてきましたね。そして3つめが、福祉活動です。企業が得た利益を、地元の人に還元する。この3つがあってはじめて企業の責任が完結すると思うんですよ。うちはまだ赤字ですが、露出度が高いし、2年連続チャンピオンにもなった。そういう企業が率先して社会貢献、地域還元の活動をしていけば、みんなもやるようになると思う。今回、私どもでは福祉車両を2台揃えることにしました。1台は優勝のプレミアムということで、日産自動車からいただきました。もう一台はスポンサーさんやサポーターに趣旨を理解してもらって、募金で購入する予定です。試合を見に行きたくても行けなかった車椅子の人たちを搬送したり、日常生活でもいろいろ利用していただけるように運用案を考えているところです。

YK そういう点では、木村浩吉さんが主になって進めている「ふれあいサッカー」プロジェクトの持つ意味合いも大きいですね。

左伴 そうですね。あれは、トップチームと同じマリノスのブランドをつけた人間があちこち出かけていって、いろんな人とサッカーを楽しむというプロジェクト。1回の開催に集まるのは数十人だとしても、スポーツを通じて味わう清々しい気持ちや感動は、たとえばレッズに勝って6万5000人が味わった歓喜と同じだと思う。数十人も6万5000人も、一人ひとりで考えれば変わらないんですよ。僕は、人から期待されることについては、それが小さなレベルでも大きなレベルでも、すべて同じ目線で対応しようとみんなに言ってるんです。スタジアムに2万5000人が集まってくれたから、いっぱいサービスをしよう。でも戸塚の練習場には50人しか来ないから、こっちは、まあいいか……。それではいけないんです。戸塚の練習場のサポーター席の屋根が壊れたら、みなとみらい移転でお金がかかる時だけれども、やはり修繕しなくてはいけない。50人の見学者にとって、それはとても重要な要望ですからね。スケールメリットを考えれば、2万5000人にサービスを集中投下した方がいいけれど、それではお客さんあってのプロのクラブ、というスタンスで社員が仕事をしなくなってしまう。新聞が取り上げてくれるような、目立つサービスしかしなくなってしまう。それでは、本当の意味でお客様には認めてもらえないと思うんですよね。

※「ふれあいサッカー」プロジェクトとは、木村浩吉プロジェクトディレクターを中心に、2000年から始まったサッカーの普及活動。市内小学校の巡回指導、各種サッカー教室の開催、肢体・知的障害者、電動車椅子サッカーのサポートなどさまざまなプログラムがあり、昨年は延べ23,987人が参加した

横浜F・マリノス 『ふれあいサッカー』プロジェクト
「ふれあいサッカー」の様子 「ふれあいサッカー」の様子 楽しいイベント、企画がもりだくさんだ 楽しいイベント、企画がもりだくさんだ

■ニーズの違いを知らなければ売れない。

YK ホームページには、先3試合分の入場予定者数(前売り券の売り上げ状況)も出していますね。

左伴 これには二つ理由があります。一つはサポーターに対するお知らせ、もう一つは社員に向けた僕からのメッセージです。昨年の日産スタジアムの平均入場者数は約2万5000人でした。他のクラブなら十分な数字ですが、日産スタジアムは7万人収容なので、空席も結構目立つんですね。ですから社員全員がこの状況を真摯に受け止めて、もっとお客様にチケットを買っていただかなければいけないという気持ちを持ってほしい、そんな思いを込めているんです。そうしたら、あの数字を見たサポーターたちが「まだこの程度しか売れてないよ。これじゃあ選手が元気出ないから、友だちを連れて行こうぜ」などとチャットでやっていたんです。僕はそういうものも良く見るんですが、涙が出るほどうれしかった。思わず彼らを社員にしたいと思いましたよ(笑)。

YK シーズンチケットの売り上げが他のクラブに比べると低いそうですが、その理由は?

左伴 他のクラブはチケット売り上げの7、8割がシーズンチケットですが、うちは14%くらいしかありません。いろんな理由がありますが、一つは箱が大きいということですね。他クラブの場合は、入れなくなったら困るから買っておこうというニーズがあるから売れる。しかしうちの場合はシーズンチケットを買わなくても、前売り券や当日券で十分入れてしまう。それでも、割り引きとかグッズとかいろんな特典をつけて販売していたんですが、実はそこが少し勘違いしていた部分があったんです。というのは、あるシーズンチケット購入者から、「スタジアムに入る時、他のお客さんと同じように列に並ぶのではなくて、すっと入りたい」という声があったんです。彼らはグッズをもらうより、試合会場でのプレステージ、利便性という特典の方がうれしいんですね。そういうニーズの違いを知らないと、いくら売り込んでも数は出ない。それに気づいたんです。それでさっそく5月から、シーズンチケット購入者専用のゲートを設けることにしました。シーズンチケットを売らなくてはいけないのは、試合がなくてキャッシュが入らないシーズンオフに、有利子負債を増やさないためです。この時期にキャッシュがあれば、選手の補強資金にも充てられる。今回は山瀬功治くんを獲得しましたが、良い選手を獲れれば、サポーターやファンにとってもメリットになる。「社長からの手紙」にこういう話を書いたら、「そういうことだったのか。俺は買ったぞ。僕も買いに行かなきゃ」などとサポーターたちがまたチャットしていた。本当にありがたいことです。

YK シーズンチケットの売り上げが、全体の何%くらいあればOKなんですか。

左伴 いま一般ユーザーベースで約4000ですから、1万~1万5000になればクラブ経営は楽になりますね。うちは、企業さんのスポンサーフィーのウエイトがかなり大きい方なんです。ですからシーズンチケットの数を増やすためには、スポンサーさんに斡旋販売をしていていくという方法も考えられます。私は4年ほどイギリスに住んでいたんですが、あちらではサッカーのシーズンチケットが、コンシューマーに対するれっきとした贈答品になっているんです。日本では、まだそこまでのプレステージ性はありません。しかしF・マリノスは、そういう開拓ができる可能性のあるクラブだと思うんです。都会にあって、サッカーに関心のある企業がたくさんあって、しかも強い。こういったビジネスの展開は、今後さらに重要になってくると思いますね。

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■大切なのは、日々の努力の積み重ね。

YK 社長が就任して以来、日産自動車からの資金援助が着実に減っているそうですが、やはりクラブとしての完全独立、自立経営が目標になりますか?

左伴 2001年当時と比べると、資金援助は3分の1以下になりました。資金援助を今まで通り受けていれば、ジダンやフィーゴを獲れるかもしれません。しかしそれでは、たとえ赤字でも「俺たちは大丈夫なんだ、この程度でいいんだ」と社員が思ってしまう。もっと危機感を持って、お客さんがスタジアムに来たくなるようなアイデアを出す。商店街を這いずり回って、1枚でも多くチケットを買ってもらう。スポンサーに対してもただ看板を出すだけじゃなくて、こんなイベントをやりませんか、こんなグッズを作ったのでいかがですか、と提案する。そうならなくてはいけない。1990年代後半、日産自動車の経営がかなり危うくなった時がありました。そこにゴーンさんが来て、打ち出した策がどんどん実現されて、会社が良くなってきた。僕は、この会社でも同じことをしないといけないと思うんですよ。だから、補填方式から脱却して自立経営を目指さなくてはいけない。自分たちで何とかしなければという気持ちをもって仕事をする。その成果が、お客様へのサービスというかたちに表れるのだと思います。

YK では、最後に今年の目標をお聞かせください。

左伴 まずはJリーグの3連覇。これができればJリーグ初ですから、大きなブランドになると思います。それからアジアでの優勝。ただこれは試合が水曜日の夜ということもあって、いまひとつ世間の関心が薄い。もっと対戦相手のすごさ加減や、アウェーでの厳しい戦いの様子を情宣して、もっと応援してくださいと訴求していく必要がありますね。最終的には世界クラブ選手権への出場が目標ですが、その結果を導き出すためには、ふだんからもっと社員が必死になって、お客さんがスタジアムに来てくれるように努力をしないといけない。岡田監督も言ってますよ。毎日体調管理をきちんとして、一秒たりともサボらず練習をして、試合で90分間ベストを尽くす。我々がやるのはそれしかないんだと。日々の努力の積み重ね。それが一番大事なんですよね。

【左伴繁雄(ひだりとも・しげお)】 東京都出身、慶応大学法学部卒。1979年、日産自動車入社。研究設計総務部人事課長、第2リソースマネージメント部主管等を経て、2001年6月、横浜マリノス株式会社常務取締役、同8月代表取締役に就任。

駒井 允佐人 + ヨコハマ経済新聞編集部

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