6月17日、横濱カレーミュージアム8階「パク森」で、カレーによるまちおこしを行っている5大都市の関係者が一堂に会した。カレー5大都市とは、ハマカレープロジェクトを推進している横浜市、海軍カレーの横須賀市、ツェッペリンカレーの土浦市、カレーの消費量日本一の鳥取市、奥美濃カレーの郡上市の5都市。いずれも、民間と行政の協働により、一体となって街の活性化に取り組んでいる都市だ。第1部は「ハマカレープロジェクト2005 キックオフカンファレンス」として、今年度のハマカレープロジェクト「横濱カレーシティ・ムーブメント2005」の実施概要が発表された。昨年に引き続いて横浜観光プロモーションフォーラム認定事業となった同プロジェクトでは、昨年度に発掘したハマカレー認定店100店のより一層のPRと、新たに創作し人気を博した「横浜フランスカレー」の流れを受け、「横浜フレンチカレー」の全国ブランド化を推進していくという。
ハマカレー制作委員会の名誉顧問である中田宏横浜市長は、「たいていの洋物は横浜から入ってきた歴史があります。いろいろなものの発祥の地になっている横浜はズルイのですが、世界で唯一のカレーのフードテーマパークである横濱カレーミュージアムを擁し、日本におけるカレー発祥の地であり、29種類ものカレーを食べることができるインターナショナルなカレーシティであるということに間違いはありません。昨年は市内の美味しいカレーの発掘、横浜フランスカレーの創作を推進しました。今年の横浜は、昨年度のハマカレーの取り組みをより進化させていく年と位置づけ、フレンチカレー都市としてブランド化していくことを宣言します」と述べ、今年のハマカレープロジェクトのキックオフを提言した。その後、中田市長は「横浜フランス月間・2005」のフレンチシェフとして横浜市の姉妹都市・リヨンから来日した料理人、ピエール・オルシ氏が特別に創作したフレンチカレーを試食。イタリア米を使用したリゾット風ご飯と、マグロのあぶり焼にソースをかけたカレーに、中田市長も「軽く仕上がった、とても上品なカレー」と絶賛した。
カレー5大都市「カレーサミット」開催 -市長も出席第2部では、「カレー5大都市カレーサミット」として、まちづくりコーディネーターであるハッスル株式会社代表の小嶋寛さんの進行のもと、各都市の取り組みを紹介した。横須賀市では1999年に「カレーの街よこすか」を宣言し、横須賀市、横須賀商工会議所、海上自衛隊横須賀地方総監部、民間事業者の4者で取り組んできた。横須賀市経済部副部長の青木猛さんは、「横須賀では海軍が毎週土曜日にカレーを食べていました。ハイカラだったカレーが一般家庭へと広がるきっかけを作った街です」と横須賀がカレーの普及に果たした役割を語った。また、横須賀カレー本舗代表の鈴木孝博さんは、「商店街の空き店舗対策事業として、横須賀海軍カレー本舗のアンテナショップを4月にオープンしました。また、この夏に公開される、日本で初めて海上自衛隊が撮影に協力した映画『亡国のイージス』とコラボレーションしたレトルトカレーを10万食販売します」と積極的な活動をPRした。
カレーの街よこすか土浦市では、昨年から事業をスタート、今年の2月には「土浦カレーフェスティバル2005」を開催した。76年前に飛来した飛行船「ツェッペリン」の2号が来年、ドイツから飛来するのにあわせ、地元産の野菜を使った「ツェッペリンカレー」を開発した。岐阜県郡上市では、豊かな自然の恵みという地域のリソースを生かした商店街や飲食店の活性化事業として活動がスタートした。横濱カレーミュージアムのコーディネートにより派遣された「パク森」の森幸男さんの指導を受けて、地域に根ざした食材と、昔から各家庭に伝わる「郡上味噌」を隠し味として使うことを定義に、オリジナルカレー「奥美濃カレー」を開発。現在、市内の27店舗を奥美濃カレー認定店している。鳥取市では、観光マップ「とりマップ」の作成にあたり街の特徴を調べた際、カレールウの消費量と購入金額が全国一位であることが発覚し、その街の特徴を生かして地域活性化を図ろうと「鳥取カレー倶楽部」を設立。カレーの日の制定や、カレー店の独自認定などの活動を行ってきた。カレーサミットの最後に行われた意見交換では、5都市の都市間連携を深め、共通のHPを作成してはどうか、また合同でイベントを開催してはどうか、などのアイデアが飛び交った。最後に、ハマカレー制作委員会委員長の田代昌史さんが5都市の友好都市宣言を行い、イベントは幕を閉じた。
土浦カレーフェスティバル2005 奥美濃カレー カレミュー、「カレーによるまちおこし」本格支援開始横浜市民約350万人に愛されるカレー、『横浜っていいじゃん』とシティーセールスにつながるカレー、市民の食生活を豊かにし時代をリードする国民食カレーの普及をめざす「ハマカレープロジェクト」。主催は横浜のカレーまちおこし団体「ハマカレー制作委員会」、共催は横濱カレーミュージアム。後援は横浜市、財団法人横浜観光コンベンション・ビューローだ。2003年にスタートしたこのプロジェクト、2004年に横浜観光プロモーションフォーラム認定事業として認定された。「元気な横浜にはカレーが似合う!横濱カレーシティ・ムーブメント」として、横浜の地域振興の一翼を担うイベントとしてシティーセールスを展開している。オール横浜としての「横浜が元気!」と言わせる「カレーを使ったまちおこし」を掲げ、現在は田代昌史(社団法人横浜港振興協会参与)委員長を筆頭に、作家の山崎洋子氏、ノンフィクション作家山田一廣氏、グラフィックデザイナー中川憲造氏などで構成されている。2004年度から中田宏横浜市長が名誉顧問に就任。大きな話題を呼んでいる。
ハマカレープロジェクトその発足経緯は4年前に遡る。2001年1月、中区伊勢佐木町商店街に世界でも唯一のカレーのフードテーマパーク「横浜カレーミュージアム」がオープン。その後、地元伊勢佐木町商店街には来街者が増加するという現象が起き、横浜松坂屋の売り上げも増加。また、当時横浜市では、中田宏市長が就任当初から「カレーランチミーティング」を行い、マスコミの注目を浴びている時期でもあった。メニューとしてカレーが選ばれた理由は、カレーは嫌いな人がいない国民食だからだという。カレーは横浜が発祥の地ということもあり、「カレーで街おこしが出来ないか」と考えついたのが、このプロジェクトの始まりだったという。横浜市内のイベントの企画運営等を行う広告代理店「株式会社 横浜アーチスト」の梅谷さんと、当時横浜情報文化センター顧問だった田代昌史氏が「カレーで横浜を活性化しよう」と発起。田代氏は神奈川新聞やtvkでのキャリアも持つ、横浜の情報通。作家の山崎洋子氏や横濱カレーミュージアム プロデューサーの井上岳久氏に話を持ちかけてみると「それは面白い」という反応。当時は横浜市が横浜観光プロモーションフォーラムを開始し、横浜の観光振興に取り組み始めた頃だった。その波に乗ろうと、有識者を集め、2003年3月、田代氏を委員長にハマカレー制作委員会を結成。宇都宮の餃子、富士宮のやきそば、札幌のスープカレーなど、「食」によるまちおこしの事例について調べ、企画を考えた。
横濱カレーミュージアム 横浜市 カレーランチミーティング 横浜アーチストしかし、平成15年度の横浜観光プロモーションフォーラム認定事業に申請するものの、落選してしまった。梅谷さんはその理由を、企画内容である「料理コンテスト」が単発イベントだったからだろうと語る。初年度は、一般の部、プロの部にわけ、オリジナル創作カレーのレシピとヨコハマへの想いを募集する料理コンテストを開催、北海道から沖縄まで全国から応募があった。厳正な審査で選ばれたレシピで決勝大会を行いグランプリを決めた。グランプリ受賞のカレーは「横濱カレーミュージアム」内で販売し大きな話題を呼んだが、一過性のイベントだった為、市としては集客効果に繋がるとは認められなかったのだ。そこで2年目は横浜への集客に繋がる大規模な企画として「ハマカレープロジェクト2004」を考案。横浜の地域振興の一翼を担う事業として発展させ、元気な飲食店を巻き込み、オール横浜として「横浜が元気!」と言わせるカレーのまちおこしとしての事業展開することとなった。
この『ハマカレープロジェクト2004・横濱カレーシティ・ムーブメント』が「シティーセールス(観光集客)につながる話題性のある活動」として、平成16年度横浜市より横浜観光プロモーションフォーラム認定事業となる。助成金は30万円。横浜観光コンベンション・ビューローやマスコミ各社の協力を受けながら展開していった。
カレーでヨコハマ活性化プロジェクト始動プロジェクトの第一事業となったのが横浜カレーの名店を探す「ハマカレー発掘事業」。市民から推薦による横浜市内のおいしいカレー店を「ハマるカレー団」が試食。基準をクリアした店舗がハマカレーとして認定され「ハマカレー認定シール」を貰えるというもの。ハマるカレー団は一般公募で集められた横浜市在住のカレー好き14人で主婦・学生など様々。専門店に限定せず、ホテル、バー、カフェなど総勢165店を「発掘」した。実際に発掘作業にあたった団員は「一週間で10食以上、食事の半分はカレーでした。真夏の暑い最中歩きまわったことも大変でしたね。採点表を持って店舗を訪れ、味・盛り付けなど様々な項目で採点をしていくのですが、インド人、スリランカ人の店では事業の説明をするのに言葉の壁があり、なかなか意味が通じず苦労しました」と語る。こうして発掘された店舗は100店、29種類の世界各国のカレーが集まった。店舗を掲載したマップは「ハマカレーマップ2004」として12月1日から横浜市内の観光案内所や横濱カレーミュージアムで配布。店舗側の反応も上々だったと梅谷さんは語る。「チェーン店は除外し、個人営業主を中心に発掘を行ったので、プロジェクトでのPRは喜ばれましたね。マップ完成後、各店舗にアンケートをとったところマップを見て来たという新規客が、着々増えているとのことでした」。
横浜のカレー100店を発掘した「ハマカレーMAP」完成認定事業の第2弾として行われたのが、今までにない横浜の新しいカレーを創作する「ハマカレー創作プロジェクト」。料理研究家、スパイス専門家、マーケティング専門家などが参加したハマカレースペシャルチームで、横浜オリジナルの「横浜フランスカレー」の創作・発表を行った。横浜フランスカレーは「横浜らしく、お洒落で、ハイセンスさを感じるカレー」「フランス料理を応用した気品と繊細さを楽しめるカレー」と定義され、料理形態は、ライス(白米でなく、野菜炊き込みがよい)に、カレー味のスープ(ライスの下)、フランスを感じさせるカレールゥを組み合わせたもの。2004年10月14日から、横濱カレーミュージアムで「ロワイヤルポークカレー」、「きのことチキンの赤ワインカレー」の2品が販売された。創作者は横濱元町「霧笛楼」取締役で総料理長の今平茂さん。1981年横浜元町に開店した同店はフランス料理の伝統を大切に温め、新しい文明を柔軟に受け入れてきた横濱という土地の風土、人、街の影響を存分に感じ取り作り上げる『横濱フレンチ』を提供し続けている。今平さんは横浜シェフの会の会長を務めるなど、横浜の食文化の第一人者として横浜に相応しい仏蘭西料理を作り続け、食を通じての地域の活性化に尽力してきた。今回もヨコハマ食文化の向上のためならと熱心に取り組み、ことあるごとに料理長自ら横浜フランスカレーをPR。この企画を通して異業種のネットワーク、接点ができ、異業種連携のきっかけとなったという。
横濱元町「霧笛楼」 ハマカレー制作委員会、「横浜フランスカレー」を創作 横濱元町霧笛楼、「横浜フランスカレー」の料理講習会後援を行う横浜観光コンベンション・ビューローの岡崎さんはこう語る。「ハマカレー制作委員会による取り組みは、横浜がもともと持っている資源・要素に着目し新しい魅力づくりのひとつとしてまとめあげたという意味で、集客のためのムーブメントと位置づけ応援しています。この動きにより、これまで横浜に関心のなかった方の中にも「カレー」という切り口から横浜に興味を持ってくださる方が増えることで、さらに横浜ファンが拡大し、実際に横浜に足を運んでいただけるようなることを期待しています。カレーに関わる事業者の方だけでなく、さまざまな業種の方とのコーディネートをすることで『オール横浜』での展開とし、事業が副次的に発展していくお手伝いができればと考えています」。
「ハマカレープロジェクト」は事業実施者が展開しやすくなる一助として、フォーラムの認定事業になった。「単独事業ではなく街のムーブメントという位置づけになり、より多くの事業者との連携のチャンスが生まれたことが市内の観光事業者の活性化という点でひとつの効果を生んだのではないでしょうか。他のフォーラムの認定事業同様、事業実施により横浜全体への来訪者獲得の一翼を担っていると認識しています」。今後、5大都市と今後どのように連携していくのかについては「市としては特に位置づけてはいませんが、市長がサミット開会宣言の中でコメントしたように『互いに切磋琢磨して』ハマカレー制作委員会が目指す5大都市との連携を支援して行きたいと思っています。」
財団法人横浜観光コンベンション・ビューロー2005年度は、世界29種類のカレーが食べられる「インターナショナルシティー」横浜で、昨年認定されたハマカレー認定店100店をWebや媒体を通して強くアピールしていく方針だ。さらに第2事業としてマスコミや市民から絶大な支持を受けた、フレンチの技法や食材を使う「横浜フレンチカレー」の更なる推進・広まりを展開。横浜市民や訪れる観光客への横浜の魅力の一つとして話題の喚起に貢献してゆく。このムーブメントで「横浜フレンチカレー」を全国ブランドへ育成していく予定だ。
横浜アーチストの梅谷さんは、「横浜=カレー、という認知度はまだまだ低い。これからが勝負です。昨年度は店の発掘や新しいカレーの創作に取り組んだ。今年度はその成果を全国にPRしていく年と位置づけています。横浜観光コンベンション・ビューローやマスコミ各社の協力を受け、全国にプロモーションしていきたい。そのためにもカレー5大都市など、都市間連携を進めていきたいと考えています。ノウハウの共有はもちろん、広報面でもお互いに協力していければ」と語った。また「横浜市のカレー専門店には店のネットワークがない。このプロジェクトを通して今後、そういうものも作っていければと思っています」と語った。同社広報担当の平井さんは、「横浜と言えばカレー、美味しいカレーを食べ歩くために横浜に来る!という観光客が、どんどん増えてくれれば良いですね」と語った。
今年度はハマカレープロジェクトの認知度向上に向け、PR部分に力を入れていくハマカレー制作委員会。カレーという新たな「食」による横浜のまちおこしは、どこまで観光振興につながっていくのか。また、横の連携を深め全国に拡大していく「カレーシティ・ムーブメント」はどのような展開を見せていくのか。その動向に注目していきたい。
弓月ひろみ + ヨコハマ経済新聞編集部