12月2日(金)から4日(日)まで横浜ワールドポーターズ6階催事会場にて開催される体験型ITイベント「第4回デジコンフェスタ横浜」。横浜市内のデジタルクリエイターとIT関連企業に携わる人材を育成しIT産業の発展を目的として開催されているイベントだ。フェスタの目玉であるデジタル作品コンテストは、受賞をきっかけにプロのクリエイターとして活動を始める人も生まれるなど、クリエイターの登竜門として定着しつつある。今年は高校・大学・専門学校生等の作品を対象とした「学生特別賞」、作品の中で使用するオリジナルなデジタルサウンドを評価する「サウンドデザイン賞」を新設。プロ・アマを問わず、こどもから、学生、主婦、高齢者の方まで、多くの優秀な作品を募集。今年のコンテストのテーマは「ヨコハマはG30」と「フリー(自由課題)」で、応募総数184作品のなかから最終審査に残った15作品が3日に情報文化センターでプレゼンテーションを行い、横浜市長賞ほか各賞を決定し表彰する。
第4回デジコンフェスタ横浜公式サイト 横浜市 資源循環局 G30デジタルコンテンツフェスタ横浜、通称「デジコン」は、こうした「クリエイター育成の為のコンテスト」であると同時に「一般の人でも気軽に楽しめる参加型ITイベント」でもある。硬くなりがちな「デジタル作品」のコンテストを、より多くの一般客に楽しんでもらい、ITやデジタルコンテンツに広く親しんでもらおうというのがもう一つの狙いだ。ステージも、アイドルから特撮、アートまでと幅広い。インターネット発のアイドルユニット「デジドル」のトークショーでは、テレビ・グラビア・雑誌にと様々なメディアで活躍するアイドル達が会場を盛り上げる。トークショーの様子は、横浜インターネットラジオマガジン「ポートサイド・ステーション」の公開放送に。そして、今年からデジコンフェスタ横浜のイメージキャラクターも務める横浜生まれの特撮ヒーロー「Pマン」が登場。Pマンとは、CGだけを使った作品がもてはやされる中、様々な特撮方法と着ぐるみの実写にCGを加えたスタイルにこだわり続ける横浜の「超怠作映像集団幻視人」と「新宿の駄菓子映画集団創映会」による特撮ヒーロー映画のキャラクター。ステージでは、フィルム時代から、コンピューターを使用した現在に至るまでの製作現場、特殊撮影方法、苦労話などトークショーを行う。
ポートサイド・ステーション デジドルネット Pマンネットまた、京都のデジタルクリエイターフジイミツグさんもステージに参加。フジイさんは36歳で15年間勤めた工場をリストラになり、その後、未知の分野デザインに挑戦、趣味でやっていたキャラクタデザインが、次第に各方面で注目され始めわずか数年で一流企業からも依頼が来るようになったという大注目のアーティスト。ピアノとテルミンの奏でる音色をバックミュージックにトーク&ライブペイントパフォーマンスを行う。その他、昨年好評だったプロのクリエイターが教える「こどもデジタルアート教室」を今年も開催。展示コーナーでは簡単に細かいデザインのネイルアートを仕上げるネイルアートプリンターの無料体験、専用メガネをかけず裸眼で液晶から飛び出す3D立体映像を見ることができる最新鋭のモニター、自分が犬になってアニメの中に参加できてしまうという「I wanna be puppy~子犬になりたい!~」なども楽しむことが出来る。また、ビジネスに役立つ情報も提供、クリエイター・コンテンツ業界のための知的財産セミナーや、初心者にもわかりやすいインターネット安全教室やITよろず相談室も設置され、子供から大人まで老若男女問わず楽しめる内容となっている。
I wanna be puppy プリワン! モンキャラメルデジコンフェスタ横浜を主催する「デジコンフェスタ横浜実行委員会」の坂本徳博さんは、今回のデジコンについてこう語る。「若手のクリエイターの登竜門という位置づけではありますが、一般の人に遊びに来てもらうことにより『デジタル』とは何か、そしてそれに関わる仕事にはどんな物があるのかを知って貰うことも目的のひとつ。親が知り、子が知れば、将来の職業の選択肢が増えるわけです。それは、長い目で見ればIT産業の発展に繋がっていくと思うんですね。フラっと立ち寄るだけで十分楽しめるし、しかも無料なわけですから、まずは遊びにきて『デジコンフェスタが、どんなものなのか』体感して欲しいですね」。
今回から初の試みとして注目を浴びているのが3日間に渡り放送される「デジコン放送局」。インターネットを使用し、デジコンフェスタ横浜の会場を動画配信で全世界に向けてリアルタイム中継するというもの。これにより、会場に足を運べない人も「デジコン」をたっぷり楽しむことができる。パーソナリティーによる会場レポートがメインとなるが中には「ミックスメディア」として、FM横浜の人気番組「THE BREEZE」のレポーター藤田優一さんを迎えた逆中継なども予定されている。自身も横浜在住のクリエイターでデジコンフェスタ実行委員長であるヒラヤマユウジさんは、今回から導入されたこのインターネット放送によるミックスメディアについて「各メディアの相互関係によるPR強化はもちろんのこと、各々にとってインターネット動画配信の可能性を試せるチャンスでもある」と言う。「インターネットのインフラが整いつつある中で、インターネット動画配信事業が非常に現実味を帯びてきています。メディアだけでなく様々な分野の事業者までもが興味を持ち出している。既存メディアにとっては、脅威でもありますよね。しかし、確約がない分リスキーでもあるわけです。ネット事業部を立ち上げるコストや技術力の足り無さが原因で本科的に乗り出すに至らないという背景もある。そんな中、今回の『デジコン放送局』では、各メディアが様々な事を『試す』ことが出来ますからね。これをきっかけにネット配信の技術を求める地元メディアと、大規模ではないが優秀な技術をもって地元の中小企業(コンテンツ制作会社)が結びつく可能性も出てくるのでは」と語った。デジコン放送局のプログラムはデジコンフェスタ横浜公式サイトで確認できる。
ヒラヤマユウジ公式サイト VARIATION FMヨコハマ 84.7昨年に続き、小中学生を対象に行われるこどもデジタルアート教室では、第一線で活躍するクリエイター達が、初めてパソコンに触るこども達にも楽しめる内容の教室を開く。いしかわこうじ さんによる「ペーパーわんこ」の作り方やアジアグラフィックの代表でもある3DCGアーティスト喜多見康さんによる3Dソフトを使用した教室、「世界一簡単な英語の本~BIG FAT CAT」シリーズでおなじみのイラストレーターたかしまてつをさんによる写真を使ったデジタルアート教室など内容は盛りだくさん。こどもデジタルアート教室は、先着順の申込み制。ホームページ上から申し込む事が出来る。空きが出た場合は当日でも受付可能となっている。
こどもデジタルアート教室 申し込みフォーム12月3日(金)に「世の中のものはたいてい丸か四角か、その組み合わせでなんとか描けます。だからなんとか描いちゃいましょう!」というコンセプトのもと「子ども絵画教室」と銘打った教室を開催するのは、まつばらあつしさん。まつばらさんは東京在住のデジタルクリエイター。映画カメラマンやコピーライターを経て、ライター & イラストレーターとして、 「Mac Fan」/「Mac Fan Beginners」などの雑誌や Web マガジンなどで執筆を続けている。まつばらさんは、横浜でのこうしたイベントに対し「大きくなりすぎた東京では、実現が難しい事かもしれない地域密着型のイベントですよね。横浜はそういう点で、非常に適した場所だと思うし人材も機材も豊富で正直羨ましい」と語る。クリエイターとして参加する意義については「クリエイターとしてアピールできる以上に自分が沢山の人と知りあえ、経験できることが次の新たなクリエイトの糧になっていますね。自分自身の栄養補給になるって事が、実はイチバンの参加意義かもしれない。それからぼくらの仕事を観て、同じような仕事をやってみたいなと、考えてくれる人が1人でもいてくれたらイイかな、と思う。仕事=会社だけじゃないって、自分で見つけてくれたら嬉しいですね。でも、そいつが大きくなる前にツブしてやる、と思うかもしれないけど(笑)」と語った。
当日はまつばらさんの他にアジアグラフィツクの代表でもあるCGアーディスト喜多見康さんや、犬や猫を中心とした動物・人物のキャラクターでおなじみのいしかわこうじさん、立体イラストレーターとしてこども向け雑誌を中心に活躍するいとうまなぶさん、「世界一簡単な英語の本~BIG FAT CAT」シリーズでおなじみのイラストレーターたかしまてつをさん、デジタルを感じさせない自然な画風で人物や犬の描写を続ける横浜在住アーティスとHAL_さん、100点以上あるかわいらしいY-キャラクターズで有名な吉井宏さんなど第一線で活躍するクリエイターが続々と登場。まつばらさんが語るように、クリエイターにとっては新たなライバルを生み出す場でもあるデジコンは、イベントに参加する未来のクリエイターの卵達にとっても、一線で活躍するプロと触れ合い、技術や価値観を知る絶好のチャンスともいえるだろう。
Web 南砂画報(まつばらあつし) 喜多見 康のこどものじかん Gallery of Koji Ishikawa(いしかわこうじ) いとうまなぶ.com tt-webたかしまてつを 吉井宏 ELDORADO of HAL_ (HAL_)会場でインターネット、ホームページ制作、企業やお店のIT戦略に関する相談所「ITよろず相談室」を主催するのは、今春に設立したデジタルコンテンツネットワーク「ジョントワークス」。今回の「第4回デジタルコンテンツフェスタ横浜」では事務局としてイベント全体をサポートしている。
デジタルコンテンツネットワーク ジョントワークスジョイントワークスはデジタルコンテンツ制作会社・SOHO・クリエイターの活動を支援するネットワーク。デジタルコンテンツの制作に携わる横浜市内または神奈川県下を本拠地に活動している企業・SOHO・フリーランスで活動するクリエイター等を繋ぎ、横浜市をはじめ、地元メディア、大手メーカー、そして異業種団体などと連携の元、横浜や神奈川県下におけるコンテンツ業界の発展をサポートする。設立の経緯は、横浜市が平成9・10年度に、ITの進展にともなうコンテンツ産業について調査を行い、市内コンテンツ企業と共に検討した振興策。そこ出された「市内コンテンツ産業の集積に向け、市内企業のネットワークを構築・拡大し、市内企業間で活発に受発注や情報交換がおこなわれる環境を整えていく必要がある」という結果から、平成16年度、コンテンツ産業の制作に携わる様々なクリエイターやプロデューサーなどを取り入れた「クリエイティブシティー・ヨコハマ」構想が立ち上がった。丁度、同時期、民間でも様々なクリエイター達によるネットワークが立ち上がっており、ジョイントワークスは、そんな背景から横浜における行政、地元メディア、教育機関、民間企業、そしてクリエイターといったクラスター的存在のネットワークとして発足したのだ。
ジョイントワークス事務局長、高野竹正さんはこう語る。「IT産業・コンテンツ業界は独立しやすい業界ですから小規模展開での企業が多く、ひとつの企業そのものが大きく成長できない理由でもあるんです。アウトソーシングに頼るコンテンツ企業・SOHOは多いですがもネット上における「価格」のみを重視した単なる受発注で終わってしまい、新たなビジネス展開は生まれにくい現状がありました」。こうした背景をベースに、ジョイントワークスは、表面的な業務内容や制作コストの判断基準だけではなく、人間性・会社理念・考え方も含めたネットワーク形成を築く事により次なる展開に発展しやすい環境を創ることを目的とし、独自の捜索能力を持つ多くのクリエイターたちと繋がることで創作性・オリジナリティに溢れるコンテンツ制作が出来るようになるきっかけ作りとしている。高野さんは「現在、コンテンツ企業は大小を問わず、イラストレーション、デザイン、サウンド、ライター、編集など様々なクリエイターの能力を必要としています。アウトソーシングとしてすでにもっているネットワークでも不足している現状があるんです。クライアントの ニーズに合わせたテイストを追求されたり、オリジナルの個性的なものを開発するには、優秀なクリエイターやプロデューサーとのネットワーク形成が不可欠であると考えています」と語った。
ジョイントワークスの主な活動内容は、ワークショップ・セミナーの開催、コンテンツ業界の企業と接点をもちたがっている異業種団体などとの交流会の開催。異業種交流会の開催、クリエイター・プロデューサーの育成、会員企業・会員クリエイターのセールスプロモーションサポート、レクレーションの企画・開催など。ホームページから、各会員の詳細情報を公開できるような検索機能をもったデータベースも構築。11月には「ヨコハマ・クリエイティブNight」を開催、日本を代表するハイパーメディアクリエイター高城剛氏をゲストに迎え、多くのクリエイター、IT関連企業を前に「高城流」クリエイター的ライフスタイル、生き方、知的財産に対するアイディアを語った。トークショーの後には様々なジャンルのクリエイターやコンテンツ関係関連業者、メディア、横浜市、IT導入を検討している企業・個人などが交流会を行い、意義ある時間を過した。「デジコンフェスタ横浜」では、実行委員会メンバーの中心として参加し、ジョイントワークスの大きな活動のひとつとして位置づけている。「デジコンフェスタ横浜は横浜市をはじめ、民間企業、教育機関などが三位一体となって開催しているイベント。プロのクリエイター・プロデューサー、様々なメディアなどの協力したB to BそしてB to Cをベースに展開しています。ジョイントワークスの会員には会社・作品のセールスプロモーションの場としても参加して貰う事が出来る。また、Face to Faceの繋がりを重視するジョイントワークスではこうした共同開催のイベントを行う事で業務内容や技術レベルだけでなく、人間性、考え方などを知る事が出来るとも考えています。お互いブラッシュアップ出来る環境の中、よりスムーズで信頼できる業務提携ができると考えています。例えば、ジョイントワークス内で定型した企業同士が合併したり、より大きなコンテンツ企業へと成長していく可能性もあるわけです。」と語った。
「ヨコハマ・クリエイティブNight」、ゲストは高城剛氏入場無料の「参加型ITイベント」として来場者を楽しませると共に、IT産業の発展にも繋がるキッカケ作りを行い、次の世代につなげる「第4回デジタルコンテンツフェスタ横浜」。横浜のデジタルコンテンツ、アートを盛り上げながら突き進む「デジコン」から、今年は一体どんなクリエイターが生まれてくるのだろうか。何気なく遊んだイベントで来場者・子供たちの才能が開花するかもしれない。貴方も是非一度、足を運んでみてはいかがだろうか。
弓月ひろみ + ヨコハマ経済新聞編集部